【インタビュー】認知症患者と介護者が音楽を通じて幸せになれる2getherのアプローチ

「私は、祖母にとっていい孫でありたかった。だから2getherを作ったんだ。」

インタビューはこの一言で始まった。

医療治療法としても効果が証明され、介護についての課題を解決することも可能にするプロダクトを開発している、2gether社にインタビューを行い、同社のプロダクトや今年8月に日本で行われた概念実証(PoC)について話を伺った。イスラエルのスタートアップとして、イスラエルと日本とのビジネスについても言及され、なぜ日本の医療市場を最初に選び事業を展開していこうとしているのかについても話を伺った。

<2gether 使用中の様子>

共同設立者でCEOであるRoy氏は3年前に2getherを設立し、音楽を使って認知症患者とその介護者がどちらも幸せになれるアプリケーションの開発をスタートさせた。どのようにして認知症患者と介護者が、音楽を聞くことで幸せになれるのだろうか。高齢者の人口の増加に伴い、認知症患者の数も増加していくと予想されており、約10年後の2030年には日本の人口の3700万人が高齢者となり、そのうちの820万人が認知症患者になると予想されている。加えて認知症患者の数の増加に伴い、必要とされる介護者の人数も増えることとなる。日本だけでなく世界的にも課題とされる高齢化に対して2getherがとるアプローチとはどのようなものなのか。

—2getherが提供するアプリケーションの使い方と解決する課題を教えてください。

 5つのステップがあります。

 1. 介護者がビデオを通じてセラピストが行う2getherのアプリの使い方の説明を見て学ぶ。

 2. 認知症患者と介護者のために的確な音楽を選択する。

 3. 音楽を聴きながら、思い出した記憶や音楽を聴いている時の患者の状態などを録音、写真で撮影したりコメントで残す。

 4. 音楽を聴いている時の録音データや写真などを家族で共有する。

 5. セラピストのアドバイスやフィードバックが24時間いつでも得ることができる。

<2getherのアプリの使用サイクル>

介護者が2getherの使い方を理解し、アプリで聞くべき音楽を的確に選択し、それを聴いて思い出した過去の思い出や音楽を聴いている時の患者の状態を家族で共有することで認知症改善に効果を発揮します。それに加えて、音楽を聴いている時をセッションと呼び、そのセッションに対するフィードバックやコメントを専門家から24時間いつでも得ることができる。アプリを使用した人たちのデータはアプリを介して2gether側に送られ、その分析をセラピストが行うことで常に各ユーザー向けのサポートを届けることができます。

<アプリケーションの説明>

私たちは、介護者の介護に対する負担を軽減し、認知症患者の治療法として音楽を使った治療法を届けます。そうすることで、介護者と患者との両方の課題を解決することができると信じています。

80歳以上の人の2人に1人が認知症を患っていると言われています。日本では介護者の数も減少していますし、介護するにあたって様々な負担を強いられています。それだけでなく、現在の日本では約500万人の人が認知症患者だとも言われています。これらの現状を受けて、音楽を認知症に対する医療治療法として効果を発揮させ、世の中に送り出すことが2getherのモットーです。

—日本で行われたPoCについてお伺いしたいのですが、なぜ日本でPoCをするようになったのですか?

けいはんなリサーチコンプレックスという団体が主催する、KGAP+(Keihanna Global Acceleration Program Plus)というプログラムに参加し、京都にある学研都市病院と合同でPoCを行っています。同プログラムは、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(以下、ATR社)が連携した都市から選ばれたスタートアップが日本の大手企業と連携しPoCなどを行うプログラムです。弊社は、8月13日から11月27日までの期間でPoCを行うのですが、その中で10人の認知症患者とその方々を介護されている10人の介護者に協力していただき、2getherアプリを毎日一度、使っていただきました。

—どのような結果が得られましたか?

患者側から得られた結果に加えて、介護士とセラピストから得られた結果があります。

患者から得られた結果としては、音楽を聞くことで患者が過去の思い出を思い出すことができただけでなく、各自の思い出について話す姿がみられました。加えて、日常的に身体的な機能の向上が見られました。具体的には、患者が椅子に座っている時の姿勢が良くなったり、治療に対するモチベーションが上がったことで、治療への参加率が向上しました。最も重要なこととしては、患者の笑顔が多く見られたことだと思います。

介護士やセラピストから得られた結果としては、介護に対する負担を軽減することができました。その理由としては、2getherを使うことで、患者のモチベーションが向上し患者と関わることが楽しくなったからだという結果が出ています。

—PoCの結果を受けて感じたことや、行う上で難しかったことはありますか?

現在、私たちはPoCのまとめ作業をしており、これまでにPoCに関する記事の作成を行いました。また、12月にけいはんなで行われる記者会見に出席するために訪日します。今回のPoCを通じて得られた結果はとてもポジティブなものであり、2getherの効果を証明することができた重要な機会だったと思います。

日本でPoCを行う上で難しかったことは、私たちイスラエル人が作った、イスラエル的課題解決方法を持つこのアプリを日本の環境に適応させることでした。アプリ内の機能を全て日本語に対応させたりするのはもちろんのこと、日本の音楽文化を2getherアプリに持たせることがとても難しかったと思います。しかし、私は今回PoCに関わってくださった日本人の皆さまが2getherアプリを日本のアプリ・日本の認知症と介護における課題解決方法だと思って欲しいという信念がありました。苦労はありましたが、その苦労を乗り越えることができたからこそ、今回のPoCで素晴らしい結果が得られたのだと思います。日本カントリーマネージャーの木村は、2getherを日本市場に適応させる面だけでなく、我々と日本をつなげる上でとても頑張ってくれたと思います。

<プロダクト開発中の様子>

—イスラエルのスタートアップの市場開拓ルートとして、一般的には北米や欧州があげられると思いますが、なぜ日本を最初の参入市場として捉え、PoCを行ったのでしょうか。

2getherの解決策が、高齢化が進む日本の課題解決に役立つではないかと考えたことです。加えて、課題がある場所へ解決策を見出し、参入するチャンスがあると考えるからです。

イスラエルには、デジタルヘルス分野に焦点を当てたスタートアップが数多く存在します。また、イスラエルには数多くの文化が存在するのと同時に数多くの課題が存在します。

私は文化の数だけ革新的な解決策やアイデアが生まれると思っており、その環境の中で我々は課題に対する解決策を体現しようとします。このイスラエルのスタートアップ文化を鑑みた上で日本を見ると、日本では海外のスタートアップ企業を受け入れようとする動きが活発化しているように思います。

我々は日本に存在する課題を解決することだけに重きを置くだけでなく、日本という国にシナジーを感じ、お互いに尊敬し合いながら補完関係を強めることができると信じているので、最初の参入市場として日本を選びました。

—将来、イスラエルと日本のビジネスの関係に期待することはありますか?

我々2getherの立場からお話しすると、認知症患者の全ての方の手元へ2getherを届けたいという思いがありますので、それを実現するためにパートナーになっていただける日本企業、特に医療やエンターテイメント分野の企業とパートナーシップを組めると理想的だと考えています。一つのイスラエルスタートアップとしましては、日本との交流がもっと盛んになりより多くのイスラエルのスタートアップと日本の大企業が協働することを望んでいます。

—日本で行われるHIMSSのカンファレンスに参加すると伺いましたが、その会議ではどのようなことを期待しますか。

我々2getherは、HIMSSが主催する、HIMSS & Health 2.0 Japan 2019という、国内最大規模のヘルステックカンファレンスに参加します。出演者としましては、アプリのデモンストレーションとパネルディスカッションに参加します。

デモンストレーションとパネルディスカッションをさせていただくことだけでも、参加するにあたって好影響を我々に与えてくれることになると思います。パネルディスカッションではMedtec(メドテック)分野におけるスタートアップについて話をします。

会議に参加することで、医療分野における多くのキープレイヤーに会えることを期待しています。

—最後に読者にむけてメッセージをお願いします。

従来の治療薬と2getherのようなアプリで行う治療法のコンビネーションが、これからの治療方法として重要視されることだと信じています。イスラエルのスタートアップとして、日本の企業はパーフェクトな連携をとれるセクターだと考えており、これからもビジネスにおけるイスラエルと日本の関係が深まっていくことを願っています。

<取材後の記念撮影>

インタビュイー・プロフィール

Roy Tal氏 CEO兼共同設立者(写真中央)

祖母にもっと笑顔になってほしいと思い、二人で音楽を聞き始めた時の祖母のリアクションをきっかけに2gether設立を決意。認知症患者の治療に対する新たなアプローチである音楽療法を日本市場に届け、日本の高齢化と介護者の人数不足の2つの課題解決に役立つことができるよう奮闘している。

木村リヒ氏 ジャパン・カントリーマネージャー(写真右)

大学ではアジア学科に所属。日本とイスラエルとのハーフということもあり、小さいころから両国の架け橋となれる仕事で、社会に役立てるスタートアップ企業を探していたところ、運良く日本進出中の2getherに出会い、ジョイン。正反対ともいえる文化同士にもかかわらず、心温まる出会いが多々存在する2国間のビジネスにおいて、。文化や言葉の壁を感じさせないビジネス関係を築くことを目標とする。

(余談と記事作成者の思い)

KGAP+に参加するきっかけになったのは、Roy氏の友人で日本市場をターゲットに事業展開しているイスラエルのスタートアップで働く方がATR社を紹介してくれたことだそうです。そこから、同社の方がイスラエルに訪問され、実際に会って話をする中で、日本でPoCを行うことが決定したとのこと。

紹介が新しい機会を生み、成功へと繋がっていく。

そういう関係をより一層深めてほしいと私は願っています。

2gether社・プロダクトに関するお問い合わせは こちら から