【パレスチナ・イスラエル問題】日本人学生が衝突真っ只中のイスラエルに住んでいて感じたこと

自分はイスラエルに帰国して1週間で隔離中なので、街の様子や声をちゃんと知っている訳ではないですが、空襲警報は2日おきのペースで鳴り、シェルターに逃げ込む生活が続いていました。混乱の中、心の中では大丈夫だろうと思っていましたが、隔離中でなにもしてないのに1日が終わる頃にはどっと疲れが出る毎日でしたので、停戦はひとまず良かったです。

現地の反応の前に、自分の立場を示しておくと、まずイスラエルに来てかなりいい思いをした方だと思っています。さらに、パレスチナ人の友達やイスラエルに住むパレスチナ人の友達もたくさんいますが、やはりユダヤ系イスラエル人の友達の方が多いのが事実です。ですので、イスラエル寄りの見方になっていると思います。長文の割には自分の中で結論もまだない上で、イスラエルに住む日本人として私見を述べます。

初めに、なかなか受け入れられない考え方かもしれませんが、個人的にはイスラエルの行動は正当であると信じていますし、それ以外の方法がない現状こそあってはならない。という、どっちつかずの意見になるというのが正直なところです。

加えて、不条理な報復の応酬やイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者怪我人の数の多さには困惑と憤りも感じています。

 

アイアン・ドームの軌道(写真右側)と爆撃後の煙。

さて、今回の紛争に対するイスラエルからの反応ですが、基本的にはイスラエルvsハマスという構造と自衛権の行使の二点の主張です。

その上、極右を除く一般市民は誰も戦争をしたいと思っていません。ガザへの空爆を心苦しく思うユダヤ人やイスラエル人と共存できないかと模索するパレスチナ人がたくさんいます。みんな隣人と平和に暮らしたいと願っています。

最近、日本人の方にも関心を持っていただき関連の記事やポストをシェアしていただいてます。しかし、こちらから見ていると、イスラエルは開拓植民地という誤った情報発信や、「イスラエル悪玉論」やハマスへの無批判などの偏向報道、東エルサレムのシェイフ・ジャッラーフの住民追い出し問題やイスラエル・パレスチナ双方の選挙に絡んだ思惑などの前後の文脈が抜け落ちた報道が目につきます。イスラエルに住むものとして、そこはもっと周知してもらいたい事実ではあります。

他方、パレスチナ人たちの悲惨な環境や被害、イスラエルの違法行為は看過できません。ここは皆さんにもちゃんと惨状を伝える必要があると思います。イスラエルではもちろん被害も出ていますが、シェルターとアイアン・ドームがあり、ある程度身の安全を担保されている一方で、ガザ地区のパレスチナ人たちは逃げ場もなく、そしてなすすべもなく爆撃されます。この終わらない悪夢を想像すると心が痛みます。

長年の対立の間に双方が持つ正義や争いをするロジックが異っていき、当事者間で正論での議論が全く進みません。その結果、攻撃しあうことしかできない現状が非常に悲しいです。

そして、今はロケット弾だけでなく、国内でアラブ人とユダヤ人の隣人同士でのリンチが多発しています。

その暴力の映像や画像が計画的に、あるいは無知故の善意でSNS上に拡散され、更なる報復という形で暴力を誘発させています。こういった状況のSNSはもちろん救済のムーブメントになることもあるし、一方で意図せず火に油を注ぐことにもなり得ます。見たものを鵜呑みにせず、そういうことを自覚した上でシェアするべきだなと常々感じます。

 

ユダヤ教の信者にとって重要な場所である、嘆きの壁。

停戦に関してですが、初めから予想できたシナリオだったと思います。ここ15年以上もこの繰り返しです。

では、これからどうなるのかという疑問が浮かびます。

2014年の戦争からハマスの戦力は明らかに向上していました。悲観的な見方をすれば、同じことを繰り返して、数年後にまた今回の様な、もしくは今回以上に激しい紛争になるのを待つだけなのでしょうか。もしくは、その前にハマスと利害が一致するイランが核開発を完成させて世界地図を塗り替える可能性もあります。その場合は、北朝鮮の関係もありますから、日本人も対岸の火事として見ている場合ではないかもしれません。それまでに、イスラエルがアラブ諸国との関係改善を進めたり、パレスチナ暫定政府がしっかり西岸もガザも統治できるようになり、最悪の事態を避けれることを願うばかりです。

本戦争がネタニヤフ首相の訴求力や選挙へどのような影響を与えたかは誰も計り知れません。比較的若年層のリベラル派は悪の元凶の一つでもあるネタニヤフ首相を引きづりおろそうと努めてきましたが、イスラエル独特の複雑な選挙制度もあり失敗しています。それに全土で言えば、ネタニヤフが首相についた約15年間で右傾化してしまいました。今回はイスラエル人同士の暴動が激しく、今後も国内が二極化していくことは明白の事実ですし、褒めるわけではありませんが戦争期間中のネタニヤフ首相の会見スピーチもリーダーとして素晴らしいものでした。

この答えが出るのは次の5回目(以降)の選挙なので、引き続き一緒にウォッチしていきましょう。

最後に、イスラエルが行う国際法違反行為は決して忘れてはいけませんし、抑圧に苦しむパレスチナ人に思いを馳せるのも大事です。しかし、この中東問題はそう単純明快にはできていません。自分自身、体験して、読めば読むほど、聞けば聞くほど、見れば見るほど、何が正しいのか分からなくなっています。

必要なのは、簡単に二元化・単純化することのできない真実があるということに気づき、歴史や現地の人たちの考えを勉強し、話し合うことだと思います。

 

コロナ禍で人のいないテルアビブのビーチ。

 

*この記事はMENA watch / 日本発の中東メディアに代表・赤野が寄稿したものを転載しています。