イスラエルでの実験的な新型コロナ治療法3選

2021年2月、世界中の注目は新型コロナ治療薬開発に集まったが、4月になると、世界的なワクチンキャンペーンが本格化し、治療薬は重要視されなくなった。しかし、ワクチンを打ってもウイルスの感染増加傾向の歯止めが効かないことがわかった今、新型コロナ治療薬開発は再び注目を集めている。

また、ワクチン接種を行っていない層を発生源とするデルタ株やデルタ・プラス株などの変異株が猛威を奮っており、新型コロナの軽症、中等症、重症に対する治療法開発が急務である。

日本でも塩野義製薬が飲むタイプの新型コロナ治療薬開発が進められる中、本稿では、イスラエルで実験が進められている3つの有望な新型コロナ治療薬候補を紹介する。それぞれ静脈内投与、錠剤、吸入タイプに分かれる。

 

Allocetra (開発元:Enlivex Therapeutics)

Allocetraは、Enlivex Therapeutics社が開発を進めるマクロファージと呼ばれる機能不全の免疫細胞を再プログラムする免疫療法で、重症患者に静脈内注射で1回投与するタイプの候補薬。エルサレムにあるHadassah-Hebrew University Medical Centerの内科部長であり、コロナウイルス部門の責任者でもあるDror Mevorach博士の研究に基づいている。

Allocetraはこれまでに21人の重症患者の治療に成功した実績があり、うち19人は製剤を投与してから平均5.6日で退院した。同社は本製剤の安全性と即効性を認めており、結果は良好だそうだ。

Enlivex社は現在イスラエルと欧州で152名の患者を対象に、半数にAllocetra、半数にプラセボを投与するフェーズIIb試験を開始している。

Enlivex Therapeuticsは、2005年に設立されたマクロファージの再プログラミングに焦点を当てた臨床段階の企業。がん、敗血症、COVID-19、その他の適応症へのマクロファージ・リプログラミング薬剤パイプラインを推し進めている。同社は、2019年にテルアビブ証券取引場に上場している。

 

Opaganib (開発元:RedHill Biopharma)

Opaganibは、抗ウイルス・抗炎症作用を有しており、新型コロナによる肺炎への経口治療薬である。世界中の新型コロナ患者のほとんどが入院していないため、経口剤は配布や投与が容易という点で期待されている。

複数の国で475名の患者を対象としたフェーズII/III試験が7月19日に終了し、間もなく結果が出る見込みだ。また、エルサレムのShaare Zedek Medical Centerでは、2020年4月から5月にかけて、23人の患者にOpaganibを同意のもと投与し、比較検証を行い、良好な結果が得られた。比較した対照群では3分の1の患者が挿管や人工呼吸を必要としたのに対し、本製剤を投与した患者では挿管や人工呼吸の必要性はゼロであった。本製剤を投与した患者は、酸素要求量、リンパ球数、その他の炎症マーカーの点でも改善したという結果を得た。

また、アメリカでの40人の入院患者を対象としたフェーズII試験では、レムデシビルなどの薬剤を投与された患者と比較して、一貫した効果が確認され、より早く退院できるようになった。

Opaganibは、コロナウイルスのスパイクタンパクに作用するのではなく、ウイルスが体内で複製・拡散するためのメカニズムに作用するため、デルタ株およびスパイクタンパクに違いがある変異体に対しても、RedHill社は引き続き有効であると考えている。そして、ウイルスの複製を阻害する薬剤の能力は、Covid-19の初期段階で、一方、過敏な免疫反応を抑える抗炎症能力は、後期段階で有効な可能性がある。

RedHill Biopharmaは2009年に創業した主に消化器系疾患と感染症に特化した医薬品企業。同社は、2018年にNASDAQに上場している。

 

EXO-CD24

EXO-CD24は、Tel Aviv Sourasky Medical CenterのNadir Arber教授が開発した実験的な吸入薬で、Covid-19患者の5~7%の肺で発生するサイトカイン・ストームを阻止することを目的としてしている。

サイトカインとは細胞からでる他の細胞に命令を伝達するタンパク質で、サイトカインが細胞から血液中に分泌されると、発熱や倦怠感、頭痛、凝固異常などが起こる。ウイルス感染の量が多くなると、炎症の量も多くなり、サイトカインが過剰に放出され健康な細胞を攻撃し始める現象がサイトカイン・ストーム(免疫暴走)である。

昨年2月に発表されたフェーズIの結果によると、EXO-CD24を投与した30名の患者全員が回復し、そのうち29名は投与後3~5日で退院した。8月5日、同医療センターは、ギリシャの複数の病院でフェーズII試験の一環としてEXO-CD24を投与した重症の新型コロナ患者90名のうち93%が5日以内に退院したとの報告も得られた。EXO-CD24が肺に直接投与されるため、フェーズI・II臨床試験の患者には大きな副作用は見られなかった。

Arber氏は、EXO-CD24をサイトカイン・ストームに関与するメカニズムのみを標的としていることから、ステロイドのように免疫系全体に影響を与えるものではないと発表している。

現在、イスラエルで155名のCovid-19患者を対象としたフェーズIIIが行われており、2021年末までに終了する予定。

*ISRAEL21c-Uncovering Israelの原文を読む。