医療技術や衛生状況が向上するにつれて、全体的に人類の平均寿命は伸びてきています。一方で長くなった寿命のうちちゃんと健康で生きていくことが出来る期間を示す健康寿命にスポットライトが当てられるようになりました。現状では世界的に見て、 現在80歳以上の20%の人々が認知症のような認知障害、25%が視覚障害、80%が難聴で苦しんでいます。
NPO法人Population Research Bureauの2015年の報告によると、65歳以上の米国人住民の数は2060年までに2倍になり、また日本においては2030年には高齢化人口が全体の33%を占めると見込まれている。このように今日では老齢化がもたらす問題はグローバルに成長している巨大な市場です。それに伴い、高齢者の健康をモニタリングしたりすることで、より長く健康な生活を送れるような新興技術やその応用するビジネスが日々生まれています。
少子高齢化社会のパイオニアでもある日本でも今年10月にAging Japan主催で各国の知識人や企業を集めて行なった高齢化に関するカンファレンスAging 2.0が開催されるなど、関心が高まっています。
また、調査によると、イスラエルにおいても2035年までに高齢化人口は倍増する見込みで、人口の14.6%が65歳以上になると予測されています。政府も各国と連携していく姿勢を示しており、個人的にイスラエルはもちろんグローバルな市場でここには日本はチャンスがあると見ています。
今回の記事では、技術イノベーションを高齢化に伴って生じる問題解決や高齢者のQOLの向上に取り組むイスラエルのスタートアップを10社紹介します。
イスラエル高齢者向けソリューションスタートアップ10選
Intuition Robotics Ltd.
https://www.intuitionrobotics.com/
2016年設立、拠点はRamat Gan。1ラウンドで計$22Mの資金調達。直近では2018年1月にシリーズAで$6M資金調達。
高齢者向けの自宅ソーシャルロボットであるElliQを開発。高齢者に特殊な技量を必要とせず技術の恩恵を受けられるよう、シンプルなデザインと直感的なインタラクションモデルは、デジタルコンテンツ(音楽やビデオなど)をを提供したり、運動を促したり、家族とのコミュニケーションをサポートすることで、社会からの孤立化を防ぐ。また、AIシステムによってユーザーの嗜好、嗜好、習慣を学習する。
UPnRIDE Robotics Ltd.
2013年設立、拠点はYokneam Illit。シードラウンドやクラウドファンディングより計$4.89Mの資金調達。
テクニオン・イスラエル工科大学の研究初のスタートアップ。自律歩行が出来なくなった人に向けて、直立型のモーター付き車椅子を提供している。テクニオンの創業者が事故にあった事で自身で歩くことが出来なくなり、別のイスラエルスタートアップReWalkと出会ったことによって開発を動機付けられた。
Temi
2016年設立、拠点はNew York、Singapore、Shenzhen、Tel Aviv。計$60M資金調達。
2016年にイスラエルの軍事ロボット会社Robo-Team Ltd.から派生し、Roboteam Home USA Inc.として設立された。1世帯あたりに配置されるのを想定されたパーソナルアシスタントロボットを開発。現在1,500ドルで提供されており、スマートホームデバイスの制御やコミュニケーションなどに使用される。
Uniper Care Technologies Ltd.
https://www.unipercare.com/en/home
2015年設立、拠点はTel Aviv、Santa Monica、Australia。2ラウンドで計$3.1Mの資金調達。直近では2018年5月にシードラウンドで$2.4M資金調達。
既存のテレビに接続するデバイスを開発し、携帯電話の小さな画面に苦労することなく、ビデオ通話やソーシャルネットワークやインスタントメッセージングアプリケーションを使用することができる。ユーザーは、スクリーンを通じて、オンライン教育コース、スポーツクラス、社会活動に参加するできる。また、介護従事者向けの患者および家族とのコミュニケーション、スケジュールの整理、リマインダーなどのツールとしても活用できる。
OrCam Technologies Ltd.
2010年設立、拠点はJerusalem, Israel 。今まで計$87.4Mの資金調達。直近では2018年2月にベンチャーラウンドで$30.4M資金調達。2018年2月19日にユニコーン企業になった。
盲目、視力が著しく低下した人、失読症、失語症などの人に向けたビジュアルアシスタントスマートグラス。2017年3月にIntelにより買収が発表されたMobileyeのCTO Amnon Shashuaがco-founderを努める。視界にある文字をタッチもしくは指差しすると、それらをめがねに付けられたカメラが認識し、音声で読み上げてくれる。認識不可能なものはモードを変更し、デバイスに学習させることも可能。
併せて読みたい記事:イスラエルスタートアップに新たなユニコーン企業が誕生・OrCam
Vayyar Imaging Ltd.
2011年設立、拠点はYehud, Israel 。3ラウンドで計$81Mの資金調達。直近では2017年12月にシリーズCで$45M資金調達。
もともと乳がんスクリーニングのために開発されたVayyarの高周波3Dイメージングセンサーは、現在では高齢者の日常の活動パターンや、自宅の事故やその他の緊急事態を検出するためのバイタルサインをモニタリングすることに活用されている。
Hip Hope Technologies Ltd.
2011年設立、拠点はHod Hasharon。今まで170万ドルの資金調達し。
Hip Hope develops a wearable device designed to prevent hip fractures. The FDA-approved device detects falls and uses airbags to soften the impact. The device can also alert caregivers of accidents. The company has raised $1.7 million in funding.
高齢者に多い転倒による股関節骨折を防ぐために設計されたウェアラブルデバイスを開発。 FDAが承認したデバイスはユザーの転倒や落下を検知し、エアバッグを使用して着地の際の衝撃を和らげる。また、介護者に転倒があったことをを知らせることも可能。
MediSafe Project Ltd.
2012年設立、拠点はHaifa、Boston 。今まで3ラウンド計$21.5Mの資金調達。直近では2017年3月にシリーズBで$14.5M資金調達。
ユーザの処方箋スケジュールに従って服用を管理し、飲み忘れや誤った飲み合わせを防ぐモバイルアプリMedisafeを開発。
EarlySense Ltd.
2004年設立、拠点はRamat Gan。今まで7ラウンド計$106Mの資金調達。直近では2016年6月にGラウンドで$25M資金調達。日本からは三井物産が投資を行なっている。
シグナルプロセシング技術による、非接触の早期検出患者モニタリングシステムを開発している。ベッドのマットレスに設置されたセンサーによって、施設や入院患者の心拍数、呼吸値、動作、またベッドにとどまっているか否かを感知する。 CDSも同様に開発しており、常にナースステーションなどで患者の状況を中央集権的にバイタルサインをモニタリングできる。
ContinUse Biometrics Ltd.
2015年設立、拠点はTel Aviv。今まで2ラウンドで計$27Mの資金調達。直近では2018年3月にシリーズBで$20M資金調達。
ナノテクノロジー技術を応用し、分子振動を検出できるセンサーを開発。このセンサーは、ユーザーとの物理的接触を必要とせず、バイタルサイン、心臓および肺の聴診、筋肉の活動、および生化学的スクリーニングを含め、20以上のバイオメトリックスパラメーターを遠隔で同時にモニターすることができる。
(参考資料:Israeli Technologies Taking On the Challenges of Old Age)